日常家事債務

民法761条には、日常の家事に関する債務の連帯責任について以下のように定められています。

【民法第761条】
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

日常家事債務とは、衣食費医療費教育費交際費などの家庭生活を営むために日常的に必要な費用やそのための借金をいいます。このような費用は、夫婦で連帯して責任を負うことになります。何が日常家事債務に当たるかは、その夫婦の生活規模、地域の慣習や取引の性質など客観的に観察して判断する、というのが判例ですが、高価な宝石の購入、子供の旅行費用捻出のための借金、住宅ローン、夫の営む事業の資金借入などは日常家事債務とはいえません。
日常家事債務でない債務は連帯責任を負わないということになりますが、夫婦の一方(妻)が他方(夫)に代理権を与えたと認められ、且つ、夫と契約の相手方が、夫が妻の代理人であると信用するのもやむをえないと認められる事情がある場合や、夫がした契約や借金の相手方が、その契約や借金が日常家事債務の範囲内であると信じるのもやむをえないと認められる事情がある場合は、妻は連帯責任を負うことがあります。
夫の借金が日常家事債務に当たるとして、妻が連帯して責任を負うこととなった場合、離婚したからといって妻はこの責任を免れることはできません。