婚約について

婚約とは、男女2人の間でされた、誠心誠意、将来結婚しようという確実な約束です。交際期間中に、「将来結婚したいね。」と言っただけで法的保護の対象にはなるわけではありません。婚約は結婚しようという「確実な約束」であり、婚約が成立していると認められる事実がある場合にのみ法的保護を受けることができます。しかし、わが国の法律には結婚に先立つ婚約についての具体的な規定はありません。婚約について考える場合は、判例、学説などを基準に判断することになります。婚約成立の効果としては、将来法律上の婚姻関係を成立させるように努力する法律上の義務が生じます。この義務は、結婚する気がなくなったという相手に結婚を強制できるようなものではありません。婚姻は、当事者の自由意思が最優先されることで、結婚を強制することはできないからです。婚約することにより得られる法的保護というのは、婚約破棄された当事者が相手に損害賠償することができるということがその主な内容になります。

結納や婚約指輪の意味

婚約は上述のとおり、将来結婚しようという確実な約束が成立すれば、それだけで成立します。婚約に伴い、結納や婚約指輪の授受をするという儀式がありますが、婚約成立のために必須というものではありません。ですが、婚約成立について当事者間で争いが生じた場合に、約束だけでは婚約成立を証明することは困難であることもあります。結納、婚約指輪の授受という儀式を行っていれば、親兄弟、親戚などに婚約が成立したという事実を知ってもらえますので(証人になってもらえる)、婚約が成立したと認められやすくなります。

未成年の婚約

未成年者は原則、単独では契約を締結することができません。土地や建物などを売買しようとする場合、法定代理人の同意が必要です。しかし、婚約は財産上の取引と違い身分行為ですから、婚約の意味が本当に分かっていれば婚約できることになります。未成年者の結婚は、男18歳、女16歳という民法の規定がありますが、婚約は結婚ではありませんので、この年齢制限は適用されません。判例では男女とも15歳になれば婚約できるとされています。

配偶者のある人との婚約

わが国の民法は、一夫一婦制を採用していますので、配偶者のある人との婚約は、公序良俗に違反した約束であり、無効が原則です。配偶者ある人との婚約といっても、その人の婚姻関係が既に完全に破綻して事実上の離婚状態で、その破綻原因が婚約当事者と無関係であるという場合ならば、離婚手続が終了し次第、結婚しようという婚約は有効となる可能性があります。

具体例を挙げると、ある夫婦、夫Aと妻Bがいて、女Cがいるとします。AとBのは籍は入っているが、夫婦関係が既に破綻していて、そのような状態でAとCが婚約するような場合は認められることがありますが、AとBが夫婦として破綻する前に、Cが現れAと不倫関係になり、それがもとで、AとBの夫婦関係が破綻したような場合、AとCが婚約した時期が、AとBの夫婦関係破綻後であっても、破綻の原因を作ったのはAとCですから、この婚約間無効ということになります。夫婦関係がどうであれ、婚約は離婚が成立してからのほうがいいのはいうまでもありません。

婚約を解消したいとき

婚約をしたからといって、必ず結婚しなければならないというものではありません。婚約解消は理由を問わず自由にすることができます。婚姻は当事者の自由意思にかかっているので婚姻を強制されることはありません。しかし、解消できるとしても、「正当な事由」がない場合には、結納の返還義務や理由によっては慰謝料(損害賠償)が発生することもあります。正当事由とは、「円満かつ正常な婚姻関係を将来営めない原因となり得る客観的かつ具体的な事情」をいい、相手に他の異性関係があることが典型例ですが、他に、相手が不治の病に罹患したこと、相手の態度が豹変したこと、相手の経済状況が日常生活を営むことが極めて困難な程度に悪化したことなどが正当事由にあたります。当事者の合意が成立し婚約解消したというのも当然正当事由になります。これに対し、親が反対した、相性がよくない、方位が悪い、年回りが悪い、性格が合わない、相手の資産が思ってたより少ない、家風に合わない、他に好きな人ができた等は、正当事由にはなりません。