夫婦の同居義務

民法は、夫婦の同居義務を定めていますが、この同居義務は夫婦が社会生活上の最も小さい共同体であって、婚姻関係が夫婦間の精神的・肉体的・経済的な共同によって維持されることから、同居が夫婦双方にとって必要なことが根拠とされています。
同居義務は、夫婦の一方が他方に強制できるものではなく、夫婦間の対等な立場での話し合いによって決めることになります。正当な理由があって同居を嫌がる配偶者を夫婦だからといって強制的に同居させることができるということではありません。

同居しないことが許される場合というのは、単身赴任の場合(経済的な視点から見て婚姻関係の維持に必要だと夫婦双方が了解している)、実質的にはすでに夫婦関係が破綻している場合などです。夫婦関係が破綻に近い状態で、円満な婚姻関係の回復が早期には期待できないことを理由として、夫婦双方に同居を拒否することを認め、冷却期間を置くことを認めた裁判例がありますが、これは感情的な対立を緩和させるために一時的に別居することは、将来的に円満な婚姻関係を維持・存続させるための方便となりうるということから肯定されています。